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SF界の古典、アイザック・アシモフの短編小説集です。
原題は"I, ROBOT"で、ウィル・スミスが主演した同名の映画の原作ということになってます。
ただし、内容は全く違うものです。人名や設定の一部を借用した程度の一致率。
有名な「ロボット三原則」も、この人の小説が初出です。
何がよかったって、ひとえにロボットたちのバカさ加減が妙におかしくてかわいいことですよ!
特に小説の最初の方、ロボット黎明期に作られたタイプは擬似人格プログラムも不完全で
融通が全く利かないし、ロボット三原則のせいで人間には絶対服従。
そういう古いポンコツロボットに対して人間は腹を立てますが、
その様子もユーモアが効いていて面白い。
不完全なロボットとそれを扱う人間のやや傲慢な態度のリアルさもよかったです。
実際に起こりそうですよね、ロボット差別。「ロボットに権利はあるか」とか真剣に議論してそうです。
ロボット技術の進展の思考実験といわれるのも分かります。
昨今氾濫気味の、外見上人間と見分けの付かない「ヒューマノイド」よりも、
外見はあくまでマシンの「ロボット」の方が好きです。
メイドヒューマノイドとか、それただの変わり者の美少女やないか…。
不気味の谷は、個人的には「谷」ではなく下り坂の気がします。
もし、人間と見分けの付かないヒューマノイドと接して、
そのときは気づかず「人間」として好感を抱いていたものを、
あとになってあれはヒューマノイドでしたと教えられたら、
教えられる以前と同じように好感を持てるでしょうか。
結局、対象をどのように認識するかに帰結するのかなあ。
人間はしばしば完全なものを畏怖しますよね。
品行方正、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能で
その他もろもろの美徳を兼ね備えた超絶人間がいたとしたら、
ひとつくらい欠点を見つけたくなるのが人情というものです。
そこでひとつでも何か人間くさいところを見つけるとすごく安心できたりして。
人間は完全なるものを敬愛し、不完全なるものに恋焦がれるのである。
まあ、そういう完璧超人は逆に人間らしくないのですけど。
「完璧な人間」と「完璧なヒューマノイド」との違いとはなんぞや。
……これ以上ぐちゃぐちゃと考えていくと収拾が付かなくなるので(既にまとめられなくなった)、
ここらで思索の時間はおしまいです。
小難しく考えなくても、ロボットの不器用さと人間の皮肉にニヤニヤしていれば
充分楽しめる小説です。SF作品の入門用としてオススメ。
さっきみたいにちょっと小難しく考えたい人には
同じくアイザック・アシモフの「鋼鉄都市」とか、
フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
とかがいいんじゃないかなあ。電気羊のほうがちょっと難しいです。
僕もそんなにSF作品って読まないので…。
こういう面白い作品あるよ!って人はぜひ教えてください。
では、またお目にかかるときまで。
今年何冊目かの理系本です。
大学の教養科目で受講した心理学概論の推薦図書リストの中にあったものですが、
予想外に面白くて一気に読んでしまいました。
日本の脳科学界のなかでも注目されている池谷祐二氏が、
母校の後輩、現役の高校生に最新の脳科学を語った講義録です。
高校生に向かって話している著者がとても生き生きしています。
池谷氏の語り口というか、話し方がすごく好きです。やさしい人柄が出ているなあと。
脳の認知作用から始まって対人関係、自己認識まで、
最新の脳科学の知見が盛り沢山の豪華な本です。
まあ、2009年刊行のものなので「最新」ではないのですが…。
また、ウェブサイト上で講義内で示された画像、動画などを実際に見ることができるようになっていて、
理解や感動を深めることに役立ちます。PC用特設サイトはこちら。
本を持っていなくても見られます。
この本の話のうちで特に興味深かったのは、世界と自己の認識の話です。
人間は五感を駆使して世界をよく感知し、また自分自身を正確に把握しているような気がしますが、
実際には五感は穴だらけで感知しきれていないものも多く、さらに脳の機能上、
現実とは異なった自己像や自己感覚を認識していることさえあるようです。
例えば、とあるイリュージョンアートで、実際の画面上では複数のピンク色の玉が
順番に点滅しているだけなのに、それらをじっと見つめていると、ひとつの緑色の玉が
動いているように見える、というものが紹介されていました。
緑色の玉を錯覚しているとき、脳内では緑色を感知するニューロンが活性化しており
ピンク色のニューロンは停止しています。錯覚なのか実像なのか脳の活動からは分からないのです。
また、複雑に入り組んだ静止画が動いて見える、という錯覚のときも、
物体の動きを認識するニューロンが活性化してしまいます。
脳はその静止画を「動いているもの」として受容しているのです。
なんだか気味の悪い話だなあと思います。
自己認識に関しても、筋肉の運動とその自覚の逆転の話がありました。
実際に体が動くよりも先に、つまり電気信号が筋肉に到達する前に、
脳内ではまだ動いていない筋肉を「動いた」と認識するのです。
こういった脳の活動の矛盾や不合理を紹介し、その理由と考えられる説を分かりやすく説明することで
脳の不思議を解きほぐしていく、というのが全体を通しての手法になっています。
こういった話を読むと、脳内での認識を超えて現実の世界を
認識できないのだろうかと考えたくなりますが、
そもそも脳を介さずに世界を認知することは出来ないので無理なようです。
それに、一見どうしようもない欠陥のように思える事も、進化の歴史上仕方のないことだったり、
むしろ都合がよかったりするので一概に否定出来ません。
この本の中には「なるほど!」がたくさんありましたが、
「こうではないだろうか」はほとんどありませんでした。
著者と異なる説を考えてみても途中で矛盾に突き当たったり、そもそも反論が出てこなかったり。
僕の知識不足や発想力の乏しさが主な理由でしょうが、とにかく分かりやすく、説得力があります。
このような科学解説ものに自分の考えを述べるのは難しく、
単なる紹介になってしまったことは否めませんが、
「今、誰かに本をすすめるなら」といわれて真っ先に挙げるであろう一冊です。
考えれば考えるほど哲学的な深みにはまっていく、思考の泥沼を味わいたい方はぜひどうぞ。
なんだかまとまりきっていませんが、これで終わります。
理系本の感想を書くのはすごく難しい…;
では、またお目にかかるときまで。
お勧めしてもらった寺田寅彦随筆集です。
岩波少年文庫なので読みやすいライトなものが多かったですが、
ヘタレな文系の僕にはちょうど良かったです。
寺田寅彦って知ってるんだけど何だったかなーと思っていたんですけど、
中学の国語の先生が寺田寅彦好きで、実力テストの題材になってたんだった。
頭の良い科学者と悪い科学者の話だったと思います。
自然をよく観察することから意外な発見や法則を見つけて、それを筋道つけて書いています。
身の回りには科学や物理の面白さがたくさん潜んでいるんですね。
寺彦の生きていた当時とは身の回りの「自然」もずいぶん変わっていますけど、
それは隠れた科学が少なくなったのではなくて、妖怪が科学の中に上手く隠れたように、
科学の面白さも姿を変えて隠れているだけのことなんでしょう。
大事なのは物の見方と考え方、ということです。
この人が書いていることって、今の時代に照らして考えても的外れじゃないというか、
むしろ将来の科学や世間に対しての予言が的中してる感じがします。
地震に関する随筆も入っていて思いがけずタイムリーな題材だなと思いながら読んだんですけど、
そこに書いてあることが今回の震災の被害や事態の進行をびっくりするくらい言い当てていました。
大雑把な要旨を書いてみます。
今年初の読書録。宣言どおりの理系本チョイスです。
「ヒトの科学」というシリーズものの一つで、これが一番理系っぽかったので。
副題どおり、人間の機械化と機械の人間化の両方から論展開しています。
編者が機械工学専門だからか、人間の機械化の果てにある人間とは何かという問いには
踏み込んでいませんでした。シリーズの他の本で書いてあるかも。
今年読んだ本を一覧にしてみる。
一覧に出来るということはたいした量は読めなかったということです。残念。
順番はめちゃくちゃ、思い出した順に書き出しています。
著者名は分かる範囲でカッコ内に(敬称略)。